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2005年12月09日

 

 新患のゴールデンレトリバーがきていた。14歳というご高齢。
 ご飯を食べない。体にはたくさんのしこり。お腹の中には何かが触る。検査をして、肝臓がものすごく悪いことがわかった。レトリバーに多い脾臓の腫瘍ではない。動けないのでそのまま入院して、内科療法をはじめたが、さっぱり反応しない。適正体重がおそらく30kg前後なのだが、10kgくらいオーバーしていて、画像診断にもてこずった。
 
 3日間。日に日に悪くなった。

 
 家主定休日の今日。
 午前中ぼけぼけしていたら、いんちょから電話がかかってきた。
 
 おうちの方と相談して、安楽死ということになった。おうちのひとが面会して帰っていったあと、それまでおとなしく寝ているだけだったわんこが、悲しがってかなり鳴いたらしい。いんちょがそれを見ていて、望みは薄いけど、いちかばちか開腹してみて、取れるものだったら取ってみようと思ったそうな。望みは薄くても、できることなら生きておうちに帰してあげたくなったんだと思う。
 だから、改めておうちの方に電話して、だめかもしれないけど、開けてみましょうって、飼い主を説得した。
 
 てなことでお呼び出しがかかったわけで。
 もし取れるものだったら、ものすごく大変な手術になるよ。って。
 まぁそうでしょねー。て言いつつも。取れるなら取ってあげたいじゃないすか。
 
 状態が悪いから、麻酔をかけただけでいっちゃうかもしれない。肝臓はかなり腫大している。どこまで正常かはまだわからない。でも腫瘍ならどれかの葉に限局している可能性もかなり高い。
 
 麻酔の導入は乗り切った。でも、開けてみたら。
 
 これはね。どうにもなりません。
 大きくなってしまった肝臓全体が変性を起こしている。エコーで見てなんだこれはと思っていたのは、今まで見たこともないくらいに大きくなってねじ曲がった胆嚢だった。回りにも若干波及している。
 
 そのまま、深い眠りに。いんちょが傷を縫合している間に、わんこは帰らない眠りにつきました。
 
 3日間のつきあいだったけど、すごくいい子でね。
 ごはん、たべてほしかったなぁ。
 
 おうちのひとの依頼で、おうちに帰ることなく、そのまま葬儀屋さんにお迎えに来てもらうことになった。お腹を壊していたから、汚れたところをきれいにして。看護士スタッフが、ちょっと伸びていた爪を丁寧に切っていた。
 病院に咲いている花、ちょっとしかなかったけど、スタッフが切ってきてくれたから、わんこに持ってもらった。
 
 正直、呼ばれたときは、ダメかな。って思っていた。いくらなんでも楽観できる状況でないのはわかる。そんなこたわかってたんだよ。いんちょだって。それでも、万が一でも望みがあるなら、帰してあげたかったんだ。初めて来る病院に置いてかれて、そのまま死んじゃうなんてかわいそすぎるじゃないか。
 
 安楽死に立ち合わないという飼い主はけっこう多い。立ち合えないと言うひともいる。それ自体はもう否定しない。死に向かい合えないひとがいるというのは理解した。
 
 でもさ、わんこがさ。
 迷わずうちに帰れたかなぁ。
 
 こういうこと、だいたい自分の中に溜め込んでおいて、ちょこっとずつ昇華なり消化なりしていく。書いてしまった方が楽になるんだけど、自分の外に出すのがどうにもうまくできない。書いても自分の中にあることの皮の部分だけ、ひとごとみたいになることも多くって。
 
 それでも今回書こうと思って、それでもって実際にこやって書いていられるのは。
 
 こういうことがあったって知っててメールくれるのって、けっこしんどいんじゃないかと思うんだわ。すごく嬉しかったのよ。なんでもないことみたいなフリなんてしなくていいんだなって。うれしい。
 
 自分でもずーっと我慢してたの、わかってなかったようで。
 いっぱい泣く。泣くけど。
 明日は元気に仕事するよ。

投稿者 chi : 2005年12月09日 01:04

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