« 自分のことを考えてみる | メイン | 今日のトリビア(の種) »

2005年05月24日

肥大性骨症

 肺に腫瘍ができたわんこが、肥大性骨症というのになることがある(厳密に言えば、肺の腫瘍でなくても出ることはある)。難しくないコトバでいえば、四本足の手首足首を中心としたあたりが、骨ごと腫れてくる感じ。これは、根本的な治療は、原因となる腫瘍の切除になる。
 
 1年ほど前、転院してきたお年寄りわんこがこの病気にかかっていた。その時点で既に、犬種の平均寿命をやや越えかけているくらいのお年。飼い主さんは手術を希望しなかった。抗炎症薬を内服投与で見ていくことになった。肺の腫瘍は切除しない限り治らない。それだけは了承してもらって。 

 1年近く頑張れるとは予想していなかった。腫れた足は、来院時に見られた骨膜反応がかなり引いた時期もあった。つい最近まで、1時間近くお散歩に出ているということだった。
 
 その子が、ご飯を食べなくなったと来院したのが先週半ば。病院ではご飯を食べたので、そのままお返しした。
 日曜には呼吸が悪いと来院していた。そして今日、苦しそうだという電話があった。夜に何度か苦しそうな声で鳴いたあと、血便が出るようになり、もう立てない。呼吸は荒く、意識は朦朧としている。あまりにつらそうだからと、おうちの方は涙ながらに安楽死を選択した。

 安楽死は、麻酔の注射薬を使う。
 静脈に薬を入れはじめると、まず眠った状態になる。そのまま薬を入れていく。
 つらそうな呼吸が、緩徐になり、やがて止まる。
 
 
 この子は本当に頑張った。肺の腫瘍は、それ自体では症状が出にくい(症状が出るころには末期になっている)こともあるだろうが、12〜14歳で亡くなる子が多いこの犬種で、腫瘍を抱えながらもうすぐ16歳になろうとしていた。腫瘍があると確実に判明してから1年あまり、この子なりに元気に過ごしてきた。
 日曜に、院長が「撮らせてもらった」と言った胸部のレントゲンでは。腫瘍はもうかなり心臓や気管をを圧迫するほどになっていた。影響が全身に及んで、それでもぎりぎりまで、精いっぱい頑張っていたんだと思う。
 
 
 症例として、肥大性骨症が抗炎症薬で1年近い間コントロールできたということで、記憶に残るだろう。
 でも、この子自身のことも、きっとずっと忘れない。お散歩が大好きで、おとなしくてとてもいい子だった。

 この子の名前のタイトルを付けるわけにはいかないので、この先ずっとこの子を連想すると思われる症候群の名前にした。

投稿者 chi : 2005年05月24日 00:01

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://hima.main.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/331

コメント

気が向いたら、お名前に「@neko」をつけてみてくださいまし。




保存しますか?