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2005年11月10日
おとしよりわんこ。
事情により飼い主が世話できなくなり、代理のひとがみていたお年寄りわんこ。胸にあった腫瘤から膿が出たとのことで来院した。
ほんとによれよれしている、小柄なおとしより柴っち。
もうこれが、もんのすごい乳腺腫瘍で。
わんこにゃんこの胸には、だいたい5対の乳頭があり、その左右それぞれを縦につなぐように乳腺がある。
この左側。真ん中にできている、直径約10cmくらいの腫瘍。これだけでもびっくりなのに、そのてっぺんに大穴が空いている。また、その腫瘤から脇(腋窩)に向かって大小さまざまな腫瘍がぼこぼこと連なって、脇の下にまた深くて大きなかたまりがある。
右側は、大きな腫瘤はないものの、皮膚に2cmくらいの穴が空いている。そこを覗いて卒倒しそうに。なんとこの時期に、はえのこどもさんがいっぱい詰まっていましたよ。もぅ泣けそう。
むしを取り除き、消毒をして、抗生剤やらと一緒に痛み止めの処置も。
一方で、この乳腺腫瘍。自壊(組織が壊死して割れている)して排膿してる。こういうのは、組織が死んでいて起こるから、傷の手当てをしても治らない。腫瘍の切除が治療の第一選択となる。
とはいえ。このおトシ。今までの管理も決していいとは言えない。全身状態をチェックする必要もあるし、腫瘍の進行の度合いを考えると、既に肺転移を起こしている可能性もある。腫瘍を切除しても、完全切除は難しいと思われる(悪性の疑いが強いのと、長らく放置されたために、周囲に癌細胞が浸潤していると考えられるってーことです)。
手術となると、費用もかなりかかる。飼い主さんは、おそらく支払い能力が無い。
むぅ。
いんちょは、安楽死も含めて話をしなくちゃいけないかなぁ。なんて呟いていたわけです。
痛くても怒ったりしない、とてもとてもいい子だとわかってきてるから、それはわしらスタッフとしてもひじょーにつらい。
てなことで、代理の方と延々相談。その代理のひとというのが付き合いの深い患者さんで信頼できるひとだったのが何よりの救い。
で。
手術をすることになりました。支払いはもぅ、あれもこれも削ったりして、後回しでもいいよ状態なんだと思われる。
完治はしないかもしれない。今のとこ肺転移らしいのはみられないけど、今後の再発や転移の可能性は高い。でも少なくとも、しばらくの間は、今よりずっと楽に暮らせるだろうと。
あぁほんとによかったね。
体力も低下しているので、大急ぎの手術。根治が目的ではなく、今のつらさを取り去るのが目的。でももちろん、点滴をいれて、お年寄り用の麻酔(注射薬)を使って導入。ガス麻酔に移行して、モニタリングもいつも通り。
で、実際はじめてみてまたびっくり。予想はしていたものの、腹膜にも浸潤しているし、腋窩リンパまわりもものすごいことに。腋の下もかなり切らねばならず、神経も全部の温存は不可能。
…この子、歩けるようになるんだろか…
手術が無事終わる目処が立ち、いんちょがものすごい勢いで縫合している間(ほんとに早いよぅ)、ふと不安になる。
手術を終えたら、麻酔からあっさり醒めてくれた。ぉぉ。
2時間後くらいには、ご飯もぺろんと平らげた。ぉぉぉ。
これはすごいですよ。
しかも翌日の朝、多少フラフラしていたけれど、それでも自分の足で歩いて少しだけお散歩できた。夕方にはもう、足取りはしっかりしてきて、かえって元からだと思われる後ろ足の方がよろよろしちゃってるくらいで。
ご飯はあっという間に食べ切ってしまう。そのまた翌日には、「ケージから出して!」と要求するようになってきた。
効果の高い鎮痛剤も使っているとは言え、腋の下から下腹に至るようなでっかい傷ですよ。もう、すごいですよこれは。手術した甲斐があったし、わんこも頑張った甲斐があった。
最初にいんちょが安楽死かなと言った時点で、もんのすごくブルーになっちゃったりしていたんだけど、この子の回復とともに自分も元気になってきた。
関係ないけど、今まで10年間、お預かりのときは一切食べない・排泄も3日は我慢するというチワワがまたお泊まりに来ていて、今回初めてご飯を食べてくれた というのもまた嬉しい話題。(その子がご飯を食べるところを、スタッフみんなして、初めてみたわけですよ…)
こゆことがあると一気に元気になる。お気楽なワタクシ…
投稿者 chi : 2005年11月10日 22:42
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