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2004年09月30日

本:博士の愛した数式

小川洋子(新潮社)

 借りた本。
 店頭で見たとき、売れているのだなと思った。そしてすっかり、数学系の本だと思い込んでしまった。貸してもらっても、すぐに読みはじめなかった原因はそこにある。
 
 ものがたりだった。
 抜群の数学的センスを持ちながら、若いころに交通事故に遭い、数十分の短期記憶しか保持できなくなった博士。義姉の住む家の離れに、年老いてひとりで住んでいる。
 そこに家政婦として雇われる主人公。その息子。
 
 恐らく、巷にはこの本のレビューが溢れているのだろう。
 短期記憶しか保持できない場合、人間がどのような行動に出るのかということはこの際問題ではない。
 主人公が数学に魅かれていくさまに、自分自身が博士のようなひとに出会っていたら、こんな数学との出会いをしていたなら、人生が変わっていたのではないかとも思えてくる。
 数字、数式の美しさを語ることのできる作者が、一方でそれぞれの感情を描く。主人公の冷静な目が、静かな物語の真実味を増しているような気がする。
 
 何をどのように書けばいいのかわからない。ただ、すてきな物語だと思う。
 ハッピーエンドであるのだけれども、それでも、泣けた。

投稿者 chi : 2004年09月30日 22:19

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